おまけ1 艦砲と(略)中戦・大巡編

2015年2月公開 2016年3月再掲載

※注意 
相変わらずこのページでは管理人の趣味と妄想が垂れ流されています。前のページの注意書きを読んでから閲覧することをお勧めします。
また「おまけ1」とありますが、公開後数年放置していたせいで他のページと重複する内容が多数あります。

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はじめに
新戦艦編の最後に「次回からは最強云々は抜きにして」と後付けで書いたが、各国戦艦を個々に扱う前に、もう一つ第二次大戦期に存在した戦艦群の比較を行ってみたい。
今回扱うのは巡洋艦以下を大きく上回る規模の水上戦闘艦艇でありながらも、主砲もしくは装甲と言った直接戦闘力に関連する部分よりも、速力に優れる点を武器とした艦である。
つまり第二次大戦期に中型戦艦や大型巡洋艦と呼ばれた艦海軍休日を経て二次大戦にも参加した巡洋戦艦が対象となる。

ちゃんと説明できるか怪しいが、一応もう少し詳しい解説も。
この種の艦艇としては、まず一次大戦や海軍休日以前に多数が建造された巡洋戦艦が該当する。
これは単一巨砲の装甲巡洋艦とも言うべき英インヴィンシブル級に始まり、主に英独日の海軍が整備。艦の性格は国やクラスごとに異なる部分も多いが、基本的には戦艦に比して防御よりも速力にリソースを割いた主力艦である。
一方で一次大戦での英巡戦の戦没、敗戦によるドイツ海軍の消滅などがあり、戦後の巡戦はフッド、天城そしてG3など、米レキシントン級は例外として防御面でも既存の艦を上回るような、実質高速戦艦へとシフトしていった。

その後はワシントン条約による上記新型艦の制限や、また既存巡戦の退役も進んだ結果、海軍休日時代における各国巡戦は、英フッド、レナウン級、タイガーの4隻(タイガーはロンドン条約で廃棄)、と日金剛型4隻のみに減少。
この8隻と高速戦艦である長門型の2隻を除けば、各国主力艦はいずれも20ノット台前半という、低速艦が主流を占める時代になる。

またワシントン条約は主力艦の保有新造を制限し、新型戦艦の建艦競争を終わらせた一方で、基準排水量1万トン以下の補助艦には制限が設けられる事はなかった(のちにロンドン条約で細かく制定)。
それを受けて各国海軍は巡洋艦を補助戦力として盛んに整備する事になるが、そこで巡洋艦を効率よく排除することが、艦隊戦を優位に進めるために必要であるとの考えが生まれる。
さらに軍備制限下のドイツ海軍が建造を開始したドイッチュラント級装甲艦は、実際には不完全な面もあるものの、既存の巡洋艦を上回る艦として各国海軍から警戒された。
そこで上記の艦を圧倒するために、巡洋艦を上回る火力と装甲を持ち、かつ高速発揮可能という、新しいタイプの主力艦が計画されていく事となる。

これらの艦に対して、当時もしくは後世の分類では、タイトルにも使用した「大型巡洋艦」「中型戦艦」などの他、条約期前からあった概念である「高速戦艦」や「巡洋戦艦」、そして巡洋艦狩りという目的から「クルーザーキラー」など、多様な呼称が用いられる事が多い。
あくまで呼称なんて都合により色々と変わる物なので仕方がないが、一言で完全に対象を説明出来る物は無いようだ。
一方で艦艇の性格については、前述した一次大戦期の巡戦(速力の代償に装甲が薄いが、主砲や艦のサイズと言った部分は同時期の主力戦艦並)とは違い、主砲や艦のサイズも戦艦と巡洋艦の中間程度である艦が多いのが特徴である。

今回対象となるのは、まずこの種の艦艇としては最初に登場したフランスのダンケルク級より、ダンケルク並びに装甲強化を経た二番艦ストラスブール
同級への対応を目的に整備された、伊大改装戦艦のコンテ・ディ・カブール級、ドイツのシャルンホルスト級。
(なおこうして始まった建艦競争が、最終的には前回扱った新戦艦の登場へと繋がっていく事になるが、そちらの艦はさすがに含めない事とする)
大戦に参加した巡洋戦艦の中でも、大改装されつつも巡戦的な要素を強く残している英レナウン級(艦によって改装内容が異なるが都合により一番艦のみ)と日本の金剛型。
欧州から大西洋を越えて波及した米国版クルーザーキラーであるアラスカ級。
最後に狩られる対象となる巡洋艦側からも、8インチ砲搭載型巡洋艦の中では最強だと思われるデモイン級を入れてみたい。

なお未成・計画のみに終わった物を含めれば対象にできる艦は更に存在するが、表の関係でおまけに回す予定。

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ダンケルク級戦艦

一番艦ダンケルク1936年竣工 (二番艦ストラブール1938年竣工)
全長215mm  最大幅31.1mm
基準排水量 26,500トン(27,300トン)
13万馬力 最大速力30ノット

搭載主砲 1931年式50口径33cm砲  砲弾重量560kg 初速870m/s 最大射程41.7km
貫通力 
18.3km 垂直444mm 水平69mm
27.5km垂直287mm 水平94mm

装甲厚(ダンケルク)
垂直防御 225mmKC(+16mm)傾斜11.5度→40mm傾斜24度(内傾)
砲塔前盾 330mm傾斜30度(内傾)
バーベット 310mm+15mm×2
水平装甲(弾薬庫) 8mm →20mm →125mmNC+15mm →40mmNC ≒ 159/141mmNC(材質不明)
水平装甲(機関部) 8mm →20mm →115mmNC+15mm →40mmNC ≒ 148/131mmNC(材質不明)
砲塔天蓋 150mmKC水平~傾斜約7度

上部装甲帯→甲板 なし(上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

装甲厚(ストラスブール)
垂直防御 283mm傾斜(+16mm)11.8度→50mm傾斜24度(内傾)
砲塔前盾 360mm傾斜30度(内傾)
バーベット 340mm+15mm×2
水平装甲(弾薬庫) 8mm →20mm →125mmNC+15mm →40mmNC ≒ 159/141mmNC(材質不明)
水平装甲(機関部) 8mm →20mm →115mmNC+15mm →40mmNC ≒ 148/131mmNC(材質不明)
砲塔天蓋 160mmKC水平~傾斜約7度

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

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コンテ・ディ・カブール級戦艦(大改装後)

全長186.4m 最大幅28.6m
基準排水量26,500トン
7万5千~9万3千馬力 最大速力27~28ノット

搭載主砲 1934年式44口径32cm砲 砲弾重量525kg 初速830m/s 最大射程28.6km
貫通力 
18.3km  垂直274mm 水平66mm
27.5km  垂直193mm 水平147mm

装甲厚
垂直防御 250mmKC → 20mmHT×2 傾斜60度内傾
砲塔前盾 280mmKC傾斜20度(内傾)
バーベット
 50mmNCV → 230mmKC
バーベット(艦内部) 150mmTC → 50mmPOV → 130mmKC 166
水平装甲(弾薬庫) 24mmNCV+18mmDS→ 30mmHT → 100mmNCV → 12mmHT×2 ≒  125/131mmNCV
水平装甲(機関部) 24mmNCV+18mmDS → 30mmHT → 80mmNCV ≒  110mmNCV
砲塔天蓋 85mmKNC傾斜0~約10度

上部装甲帯→甲板 あり
上部装甲帯→傾斜部 あり 220mmKC → 20mmHT×2 傾斜60度内傾
上部装甲帯→縦隔壁 あり 150mmTC → 30mmHT水平 → 70mmNCV

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レナウン級巡洋戦艦レナウン(大改装後)

全長242.2m 最大幅31.2m
基準排水量32,000トン
12万馬力 最大速力31ノット

搭載主砲 42口径15インチマーク1 砲弾重量879kg 初速749m/s 最大射程30km
貫通力 
18.3km  垂直452mm 水平86mm
27.5km  垂直345mm 水平147mm
備考 本級ではレナウンのみに配備された新型砲弾使用時

装甲厚
垂直防御(弾薬庫) 229mmKC → 25mmHT×2+50mmNCA傾斜50度内傾
垂直防御(機関部) 229mmKC → 25mmHT×2傾斜50度内傾 45
砲塔前盾 229mmKC傾斜30度(内傾)
バーベット 178mmKC
バーベット(艦内部) 38mmHT → 102mmKC
水平装甲(弾薬庫) 19mmHT → 12mmHT → 102mmNCA+25mmHT~51mmNCA+25mmHT×2 → 25mmHT×2 ≒  140/123mmNCA ~ 109/90mmNCA
水平装甲(機関部) 32mmHT → 12mmHT → 51~38mmNCA+25mmHT  ≒  82~71mmNCA
砲塔天蓋 108mmKNC水平~傾斜約5度/横傾斜数度

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

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シャルンホルスト級戦艦
全長229.8mm(234.9m) 最大幅30m
基準排水量 32,000t
16万馬力 最大速力31ノット

搭載主砲 34年式28cm54.5口径砲  砲弾重量330kg  初速890m/s 最大射程41km
貫通力
18.3km  垂直312mm 水平53mm
27.5km  垂直224mm 水平84mm

装甲厚
垂直防御(弾薬庫) 350mm KC n/A 傾斜約10度 → 105mmWh傾斜60度(内傾) 
→ 45mmWw傾斜10度
垂直防御(機関部) 350mm KC n/A → 105mmWh傾斜60度(内傾) → 45mmWw傾斜10度
砲塔前盾 360mm KC n/A傾斜20度(内傾)
バーベット 350mm KC n/A (やや内傾)

水平装甲(弾薬庫) 50mmWh → 20mmSt52 → 95mmWh ≒ 126mm?Wh
水平装甲(機関部) 50mmWh → 20mmSt52 → 80mmWh ≒ 113mm?Wh
砲塔天蓋 100mmWh~150mmWH傾斜約20度

上部外→甲板 あり 45mmWh垂直 弾薬庫95mmWh水平・機関80mmWh水平
上部外殻→傾斜部 なし

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金剛型戦艦(大改装後)

全長222.7m 最大幅31.02m
基準排水量 32,000t
13万5千馬力 最大速力30ノット

搭載主砲 四一式45口径36cm砲 砲弾重量673kg 初速775m/s 最大射程35.5km
貫通力
18.3km  垂直358mm 水平75mm
27.5km  垂直264mm 水平135mm

装甲厚
垂直防御(弾薬庫) 199mmVC+16mmHT → 102mmNVNC
19mmNS 傾斜45度(内傾)
垂直防御(機関部) 199mmVC+16mmHT → 76mmHT19mmNS 傾斜45度(内傾)
砲塔前盾 254mmVC傾斜30度(内傾)
バーベット 229mmVC

バーベット(艦内部) 149mmVC +13mmHT→ 76mmVC
水平装甲(弾薬庫) 38mmNS → 127~102mmNVNC+19mmNS ≒ 153~130mmNVNC
水平装甲(機関部) 38mmNS → 76mmHT+19mmNS ≒ 110mmHT
砲塔天蓋 152mmVC水平~傾斜約9度/横傾斜9度

上部装甲帯→甲板 あり
上部装甲帯→傾斜部 なし

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アラスカ級大型巡洋艦

全長246.4m  最大幅27.7m
基準排水量28,750t
1
5万馬力 最大速力33ノット

搭載主砲 12インチ50口径 マーク8 砲弾重量517kg 初速762m/s 最大射程35.2km
貫通力   
18.3km  垂直330mm 水平71mm
27.5km  垂直264mm 水平127mm

装甲厚
垂直防御 229mmclassA+13mmSTS 傾斜10度
砲塔前盾 325mm傾斜40度(内傾)
バーベット 330mmclassA
水平装甲 36mmSTS → 71mmclassB+25mmSTS → 16mmSTS ≒ 109/103mm classB
砲塔天蓋 127mmclassB

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

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デモイン級重巡洋艦

全長218.4m  最大幅23mm
基準排水量 15,600トン
12万馬力 最大速力33ノット

搭載主砲 8インチ55口径 マーク16速射砲  砲弾重量152kg 初速762m/s 最大射程27.5km
貫通力   
18.3km  垂直155mm 水平48mm
27.5km  垂直102mm 水平142mm

装甲厚
垂直防御 152mmclassA
砲塔前盾 203mmclassA 傾斜35度(内傾)
バーベット 160mmclassA
水平装甲 25mmSTS → 89mmSTS ≒ 99mmSTS
砲塔天蓋 102mmclassB

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

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以下、表と解説(後者は他ページと重複の為ほぼ省略)

ダンケルク安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 23km以遠 18.5km以遠 28km以遠 20km以遠
 23.5km以遠 22km以遠 7.5km以遠 
 砲塔前盾 安全距離なし 9.5km以遠  安全距離なし 13km以遠  28km以遠 17km以遠  貫通不能
バーベット 23km以遠
(24.5km以遠)
12.5km以遠
(14km以遠)
24km以遠
(28.5km以遠) 
14km以遠
(16km以遠)
16.5km以遠
(19km以遠
14.5km以遠
(17km以遠)
2.5km以遠
(4km以遠)

水平装甲(弾薬庫) 35.5kmまで 28kmまで  26.5kmまで 34.5kmまで  27.5kmまで 29kmまで 貫通不能
水平装甲(機関部) 34.5kmまで 27.5kmまで  25.5kmまで 34kmまで 26.5kmまで 28.5kmまで 貫通不能
 砲塔天蓋  安全距離なし?  安全距離なし?  安全距離なし? 34km
~31kmまで
 安全距離なし? 安全距離なし? 貫通不能

垂直装甲(30度) 19km以遠 14.5km以遠 24km以遠 15km以遠 19.5km以遠 17km以遠 3.5km以遠

砲塔天蓋の結果については新戦艦編、装甲材質に関するメモなど他ページを参照。

また上の貫通力を見ると、ダンケルクの33cm砲と金剛の35.6cm砲は垂直貫通力で大きな差が存在することになるが、この表を見ると一部はほとんど差がない。
これは33cm砲弾の斜撃性能が低く設定されているからで、30年代以降の徹甲弾としては薄く鋭角な被帽形状や、英米でなら半徹甲弾に分類されるほどの炸薬量の多さが反映されたものと思われる。

ストラスブール安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 18km以遠 13.5km以遠 24km以遠 15km以遠
 17.5km以遠 16.5km以遠 3.5km以遠
 砲塔前盾 17.5kmまで
34.5km以遠
6km以遠  安全距離なし 9.5km以遠  16km以遠 12.5km以遠   貫通不能
バーベット 20.5km以遠
(23km以遠)
11km以遠
(12.5km以遠)
21km以遠
(24km以遠
12km以遠
(14km以遠)
14.5km以遠
(17km以遠
12.5km以遠
(14.5km以遠)
1km以遠
(3km以遠)
水平装甲(弾薬庫) 35.5kmまで 28kmまで  26.5kmまで 34.5kmまで  27.5kmまで 29kmまで 貫通不能
水平装甲(機関部) 34.5kmまで 27.5kmまで  25.5kmまで 34kmまで 26.5kmまで 28.5kmまで 貫通不能
 砲塔天蓋 安全距離なし? 安全距離なし?  安全距離なし? 35km
~32.5kmまで
 安全距離なし? 25.5km
~21kmまで
貫通不能

垂直装甲(30度) 14km以遠 10km以遠 19.5km以遠 10.5km以遠 13.5km以遠 13km以遠 1km以遠

コンテ・ディ・カブール級安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 30km以遠 20.5km以遠 安全距離なし 23km以遠
 28km以遠 25.5km以遠 7km以遠
 砲塔前盾 安全距離なし 24km以遠  安全距離なし 28km以遠  安全距離なし  安全距離なし 6km以遠
バーベット 30km以遠
(32.5km以遠)
13.5km以遠
(15.5km以遠)
安全距離なし  14.5km以遠
(16.5km以遠)
28.5km以遠
(31.5km以遠
14.5km以遠
(18km以遠)
1km以遠
バーベット(艦内部) 33.5km以遠
17km以遠
安全距離なし 18km以遠
25.5km以遠 21km以遠 3.5km以遠
水平装甲(弾薬庫) 31.5kmまで 25.5kmまで  24.5kmまで 32kmまで  25.5kmまで 27kmまで 26.5kmまで
水平装甲(機関部) 30kmまで 24.5kmまで  22.5kmまで 31kmまで 24kmまで 25.5kmまで 25.5kmまで
 砲塔天蓋 25.5km
~安全距離なし
22km
~16kmまで
18.5km
~安全距離なし
27.5km
~20kmまで
21km
~安全距離なし
22.5km
~9.5kmまで
23.5km
~20.5kmまで

垂直装甲(30度) 21km以遠 16km以遠 29km以遠 16km以遠 22km以遠 20km以遠 3km以遠

:

レナウン安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

垂直装甲(弾薬庫) 31.5km以遠 20km以遠 安全距離なし 19.5km以遠
27km以遠 23.5km以遠 3.5km以遠
垂直装甲(機関部) 31.5km以遠 22.5km以遠 安全距離なし 24km以遠
31km以遠 28.5km以遠 10km以遠
 砲塔前盾 安全距離なし 安全距離なし  安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 9km以遠
バーベット 41km以遠
(安全距離なし)
27km以遠
(安全距離なし)
安全距離なし 31.5km以遠
(34.5km以遠)
35km以遠
(安全距離なし)
34km以遠
(35km以遠)
13.5km以遠
(15.5km以遠)
バーベット(艦内部 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし
安全距離なし 安全距離なし
水平装甲(弾薬庫) 35.5km
~31.5kmまで
28km
~25.5kmまで
 26.5km
~22.5kmまで
34.5km
~31.5kmまで
27.5km
~23.5kmまで
29km
~26.5kmまで
貫通不能
~25.5kmまで
水平装甲(機関部) 27km
~23.5kmまで
22.5km
~20.5kmまで
 20.5km
~16.5kmまで
28.5km
~25.5kmまで
22.5km
~19.5kmまで
23km
~20.5kmまで
23.5km
~22.5kmまで
 砲塔天蓋 30km
~26kmまで
24.5km
~22.5kmまで
23.5km
~19.5kmまで
30.5km
~28kmまで
24.5km
~21.5kmまで
25.5km
~23kmまで
25km
~23.5kmまで

垂直装甲(弾30) 24.5km以遠 13.5km以遠 28km以遠 13.5km以遠 20km以遠 17.5km以遠 貫通不能
垂直装甲(機30) 25km以遠 18km以遠 安全距離なし 19km以遠
24.5km以遠 22.5km以遠
5km以遠

冒頭でも述べた通り扱うのは一番艦のみ。防御面の改装内容が大きく異なる二番艦レパルスについては、(いずれ書き直したいが)は英戦艦編を参照。

:

シャルンホルスト安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 9km以遠 貫通不能  11km以遠 貫通不能
2.5km以遠 貫通不能 貫通不能
 垂直装甲 貫通不能 貫通不能 貫通不能 貫通不能
 貫通不能 貫通不能 貫通不能
 砲塔前盾 28km以遠 10.5km以遠  安全距離なし 12km以遠  20.5km以遠  14km以遠 貫通不能
バーベット 20.5km以遠
(24km以遠)
11.5km以遠
(13km以遠)
22km以遠
(25.5km以遠) 
12.5km以遠
(14.5km以遠)
14.5km以遠
(17km以遠
12.5km以遠
(15km以遠)
貫通不能
(1km以遠)
水平装甲(弾薬庫) 32.5kmまで 26kmまで  24.5kmまで 32.5kmまで  26kmまで 27.5kmまで 27kmまで
水平装甲(機関部) 30.5kmまで 25kmまで  23kmまで 31.5kmまで 25kmまで 26kmまで 25.5kmまで
 砲塔天蓋 28km
~16.5kmまで
23.5km
~17kmまで
20km
~5.5kmまで
29.5km
~21kmまで
23km
~14kmまで
24.5km
~16.5kmまで
25km
~25.5kmまで

垂直装甲(弾30)  貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能  
垂直装甲(機30)  貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能    貫通不能  

水平装甲(弾薬庫) 27.5kmまで  24kmまで  19.5kmまで  30.5kmまで     23kmまで   24.5kmまで     貫通不能  
水平装甲(機関部) 24.5kmまで  22.5kmまで 16kmまで 28.5kmまで 20kmまで 22.5kmまで   貫通不能 

一番下の表に関してはドイツ戦艦編を参照

 

金剛型安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲(弾薬庫) 33.5km以遠 19km以遠 安全距離なし 19.5km以遠
28km以遠 24km以遠 4km以遠
 垂直装甲(機関部) 38km以遠 23km以遠 安全距離なし 23.5km以遠
31.5km以遠 29km以遠 8km以遠
 砲塔前盾 安全距離なし 安全距離なし  安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし  安全距離なし 6km以遠
バーベット(露出部) 30km以遠
(31.5km以遠)
21km以遠
(22.5km以遠)
安全距離なし 24.5km以遠
(26.5km以遠)
29.5km以遠
(31km以遠) 
27.5km以遠
(29.5km以遠)
10km以遠
(11km以遠)
バーベット(艦内部) 41km以遠
27km以遠
安全距離なし 29km以遠
安全距離なし 安全距離なし 11km以遠
水平装甲(弾薬庫) 32.5km
~35kmまで
26km
~27.5kmまで
 25km
~27.5kmまで
32.5km
~34kmまで
 26.5km
~28.5kmまで
27.5
~29kmまで
26.5km
~貫通不能
水平装甲(機関部) 27.5kmまで 23kmまで  20kmまで 29kmまで 23kmまで 24kmまで 24kmまで
 砲塔天蓋 安全距離なし? 安全距離なし? 安全距離なし? 33.5km
~18kmまで
安全距離なし? 安全距離なし? 貫通不能

垂直装甲(弾30) 25km以遠 14.5km以遠 安全距離なし 14.5km以遠 21.5km以遠 18km以遠 貫通不能
垂直装甲(機30) 30km以遠 17.5km以遠 安全距離なし 19km以遠
25km以遠 22.5km以遠
3km以遠

:

アラスカ級安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 23km以遠 17.5km以遠 28km以遠 21km以遠
24.5km以遠 23km以遠 7km以遠
 砲塔前盾 安全距離なし 14km以遠  安全距離なし 14.5km以遠 21km以遠
33kmまで
22km以遠
33kmまで
4km以遠
バーベット 22km以遠
(23.5km以遠)
12.5km以遠
(14km以遠)
25km以遠
(27.5km以遠)
13.5km以遠
(15.5km以遠)
16.5km以遠
(19km以遠
14.5km以遠
(16.5km以遠)
1km以遠
(3km以遠)
水平装甲 30.5kmまで 25kmまで  24kmまで 31kmまで 25kmまで 26kmまで 25kmまで
 砲塔天蓋 34kmまで 27kmまで 27kmまで 33.5kmまで 27.5kmまで 28.5kmまで 27.5kmまで

垂直装甲(30) 18.5km以遠 13.5km以遠 23.5km以遠   16km以遠     21km以遠    19km以遠 
 3km以遠 

 

デモイン級安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 35km以遠
安全距離なし 35.5km以遠 15km以遠
 砲塔前盾 安全距離なし 安全距離なし  安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 5km以遠
バーベット 40km以遠
(安全距離なし)
28km以遠
(安全距離なし)
安全距離なし 32km以遠
(34km以遠)
安全距離なし
35km以遠
(35km以遠)
13km
(14.5km以遠)
水平装甲 30.5kmまで 24.5kmまで  23.5kmまで 30.5kmまで 25kmまで 26kmまで 25kmまで
 砲塔天蓋 30.5kmまで 24.5kmまで 24kmまで 31kmまで 25kmまで 26kmまで 25kmまで

垂直装甲(30) 35km以遠 安全距離なし 安全距離なし 29km以遠     34.5km以遠   33km以遠  12km以遠 

戦後に完成したデモイン級は、初期の弩級艦にも迫る基準排水量1万7千トンの船体に、毎分10発という頭のおかしい新型8インチ砲を9門搭載。最強の(8インチ搭載型)砲戦巡洋艦と言っていいだろう。
防御面は、数字の上では前級のボルティモア級とあまり変わらないように思えるが、水平装甲のさらなる増強に加え、装甲区画自体が弾薬庫側面にて甲板一段分高くなり、装甲範囲をかなり拡大している。
(既存の米重巡洋艦が補足のページでまとめた所の「3」若しくは「4」なのに対して、本級は「1」型に分類できる)

舷側を含む垂直装甲全般は、この時期の米巡洋艦の特徴として表面硬化装甲を使用。この部位は傾斜こそないものの152mmという厚さから、8インチ砲にある程度耐えることが出来る防御力を持つ。  
装甲範囲の拡大はバイタルパートの被弾面積の拡大と解釈することもできるが、対8インチ防御を持つ面積が増えていることは対巡洋艦戦では大きいと言える。
ただし戦艦主砲には多少態勢により角度が着いていても、まず耐えることはできない。本級はここで取り挙げる艦に対抗するのではなく、砲戦能力で普通の巡洋艦を狩る艦なのだから当たり前だが。
砲塔前盾やバーベットも同じく対巡洋艦用の防御力である。

一方で水平装甲には、巡洋艦としては異例の重装甲を施している。
装甲帯の上端に接続する中甲板に89mmの均質装甲を配置、さらに一段上の甲板にも25mmの厚さを持つなど、条約期の巡洋艦を大きく上回るものとなる。
数字だけでもニューメキシコ~コロラドと言った竣工時の米標準型と同等、貼り合わせの有無や装甲材質を考えるとこちらが上だろう。
20km以内の戦闘では一部新戦艦の艦砲を含め貫通することは難しい。(他の例と同じく艦の動揺を無視すればだが)

攻撃面を見ると、一分間の投射量はここで扱った他の艦艇に劣っているわけではない。
ただし何度も言っているように、このページはバイタルパートの貫通という偏った視点のみを扱っており、非装甲部分への被弾による戦闘力の低下などは無視している。
一発の威力で見るとSHSを使用するだけの8インチ砲に過ぎず、ここで扱った艦に対しては近距離以外での効果は薄いと言うしかない。

本級は最強の砲戦巡洋艦と上で述べたが、さすがに分類に困る大型巡洋艦勢と比べると、そこまで条約期の巡洋艦から隔絶した存在と言う程でもない。
あくまで攻防の両方で史上最も高いレベルを実現した重巡洋艦であり、対巡洋艦戦における圧倒的な優位性こそ本級の評価としてはふさわしい。(じゃあ何故このページで扱ったんだという話だが)
登場時期からして、敵の主力艦と砲戦を行うことは(全体の戦力差がよほど無い限り)避けられただろう。

仮に想像するとしても、昼間の砲撃戦ではここで扱う艦に対して常に致命傷を受ける可能性を持つため、砲戦で圧倒する姿を想像するのは難しい。
一方で夜戦においては本級の防御、攻撃力不足が相対的に解消されるので、その恐ろしい投射量は脅威となるだろう。

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おわりに

個別の解説が揃う時は一生来ないと思うので、ここで簡単に結論をまとめておきたい。(参考用かつ解説済みのデモイン級は除外)
今回扱った艦を見ていくと、まずどの艦も、殆どの部位で近距離から8インチ砲の直撃に耐える事は可能である。クルーザーキラー的な役割の艦として十分な物と言えるだろう。
一方で同種艦の持つ主砲(15インチから11インチまで幅広いが)に対する防御は、特に垂直装甲は12インチでも不安のある艦が多数で、良くても対14インチレベルに留まっている。
残る水平並びに砲塔装甲、そして装甲配置によっては発生する上部装甲帯からのルートなど、他の部位も艦ごとの違いはあるが、基本的に同じ事が言える。やはり同艦種の主力艦と殴り合いを行うには、防御面は十分とは言えない物である。

その中で有力そうな艦を独断で選ぶと、各部位にバランス良く厚い装甲を持ち、主砲もやや限定的だが(対垂直かつ撃角が深い時)かなりの威力を持つストラスブール。
主砲は威力不足が目立つが、主に近距離では傾斜部を用いた多重防御が強力なシャルンホルスト級。
そして防御面は平均以下で、攻撃面も砲塔一基の損傷で大きく戦闘力を落とすと考えられるが、最も重い一撃が期待出来るレナウン、と言った所が目立つ感じか。

ただ本ページの比較というのは、(二次大戦の実戦ではあまり起こらなかった)昼間に腰を据えた砲撃戦を想定したもので、この種の艦にとっては特に現実的とは言えない戦場だろう。
仮に夜戦を始めとして、より近距離(15kmもしくは10km以内)での戦闘をメインとした場合、水平装甲への貫通弾は殆ど気にしなくていい代わりに、垂直装甲は想定より近い距離から砲火に晒される事になる。
対敵姿勢で角度が通常より大きく付くとしても、元々の防御力不足を完全に克服する事はできず、またシャルンホルストのみ舷側の多重防御はこの距離でも機能するが、同級も砲塔防御などは不足し始める事に変わりない。
つまり結局はどの艦も防御力不足となり、有効打さえ先に与えればどの艦にも勝機がある、という形になるのではないだろうか。

尤も現実的な戦場について論じる場合、新戦艦編でも述べたが、艦砲と装甲のみでは比較材料があまりにも偏りすぎている事は否定できない。
夜戦であるなら専用の訓練経験であったり、レーダーの活用は特に重要であるし、同種艦同士の比較以外にも、同伴する駆逐艦や通常の巡洋艦への対応能力と言った部分など、別の視点も論じる必要があるだろう。
そして自分の知識では、そういった現実的な事を考えるのは難しい、と言うのがいつも通りの結論である。

相変わらず期待外れな結論の後にもまだページが半分ぐらい残っているが、以下は他の参考艦や未成艦などを対象にしたおまけになる。(解説は同じく他ページと重複するため、扱っていない艦のみ掲載)

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おまけ

ドイッチュラント級装甲艦三番艦 アドミラル・グラーフ・シュペー

装甲厚
垂直防御(弾薬庫)100mmWh傾斜13.5度 → 40mmWh傾斜13.5度
垂直防御(機関部)80mmWh傾斜13.5度 → 40mmWh傾斜13.5度
砲塔前盾 140mmKC n/A 傾斜約15度(推定)
バーベット 125mmWh
水平装甲(弾薬庫一部) 18mmS3かST52 → 70mmWh ≒ 77mmWh
水平装甲(その他) 18mmS3かST52 → 40mmWh ≒ 48mmWh/18mm 
砲塔天蓋 85mmWh~105mmWh?傾斜約20度

上部装甲帯→甲板 なし
上部装甲帯→傾斜部 なし

 

グラーフ・シュペー安全距離

 装甲部位\艦砲

33cm52口径
(ダンケルク)

32cm43.8口径
カブール

15インチ42口径
(レナウン)
 

28cm54.5口径
(シャルンホルスト)

356mm45口径
(金剛) 

12インチ50口径
(アラスカ)

8インチ55口径
(デモイン)

 垂直装甲(弾薬庫) 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 35.5km以遠
35km以遠 34.5km以遠 20km以遠
 垂直装甲(機関部) 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 39km以遠
安全距離なし 安全距離なし 22km以遠
 砲塔前盾 安全距離なし 安全距離なし  安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 25.5km以遠
バーベット 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 40km以遠
(40.5km以遠)
安全距離なし
安全距離なし
22km以遠
(24.5km以遠)
水平装甲(弾薬庫一部) 22kmまで 20.5kmまで 14.5kmまで 26kmまで 18kmまで 20.5kmまで 23kmまで
水平装甲(その他) 12.5kmまで 11.5kmまで 5km未満まで 15.5kmまで 5km未満まで 11kmまで 19kmまで
 砲塔天蓋 25.5km
~安全距離なし
22km
~安全距離なし
17.5km
~安全距離なし
28km
~11kmまで
21km
~安全距離なし
22.5km
~安全距離なし
24kmまで
~17kmまで

垂直装甲(弾30) 安全距離なし 27.5km以遠 安全距離なし 31.5km以遠    33km以遠   安全距離なし  17km以遠 
垂直装甲(機30) 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 35km以遠   安全距離なし 安全距離なし  19km以遠 

表がほとんど機能していないので他のおまけページで使用している中小口径砲4種類を追加。

装甲部位\艦砲 5インチ 14cm 6インチ 8インチ
垂直装甲(弾薬庫) 2.5km以遠 5km以遠 9.5km以遠 18km以遠
垂直装甲(機関部) 3km以遠 7km以遠 11km以遠 21km以遠
砲塔前盾 2.5km以遠 3.5km以遠 10km以遠 22km以遠
バーベット 2.5km以遠
(3km以遠)
6km以遠
(6.5km以遠)
9km以遠
(10km以遠)
17.5km以遠
(19km以遠)
水平装甲(弾薬庫一部 貫通不能 貫通不能 22kmまで 26kmまで
水平装甲(その他) 貫通不能 18kmまで 18.5kmまで 21.5kmまで
砲塔天蓋 貫通不能 貫通不能 23.5km
~24kmまで
26.5km
22.5kmまで

垂直装甲(弾30) 2.5km以遠 5.5km以遠 8.5km以遠 16km以遠
垂直装甲(機30) 3km以遠 5.5km以遠 10km以遠 18km以遠


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建造経緯等はドイツ戦艦編で扱ったドイッチュラント級だが、ここでは一二番艦を含め防御構造を中心に書いてみたい。
まず船体形状は三隻とも長船首楼型で、船首楼甲板は後部砲塔よりも後ろまで、つまり重要区画全体に存在する。
重要区画上を通る甲板は、船首楼甲板、上甲板、中甲板の三層、そして船体中央の大部分では最上甲板が加わった計四層となる。

そして装甲配置や厚さ、材質などは三隻毎に微妙な違いが存存する。
共通する点としては、装甲帯が13.5度傾斜する傾斜装甲であり、また下部がバルジに内装される形で取り付けられる点。
(後に建造されたドイツ戦艦では傾斜装甲が採用されなかったのに対して、本級やヒッパー級巡洋艦では取り入れられていると言うのは興味深い)
水平装甲は中甲板に施される点、そして装甲帯の奥には、中甲板から艦底までに伸びる水雷防御用の縦隔壁が弾片防御を兼ねるという形を基本としている。

具体的に見ていくとして、最初に一番艦ドイッチュラントから。
同艦の垂直装甲は、上甲板と中甲板の間の高さ(やや上甲板より)までに主装甲帯を施し、厚さは機関部横などで80mm(水線下では50mm)、弾薬庫の一部で60mm。また重要区画外の艦首尾水線部にも弾片防御程度の装甲が施される。
装甲帯の背後には先述したように、傾斜した水雷防御隔壁があり、厚さ45mm。
水平装甲は中甲板が45mmの厚さを持つが、その範囲は水雷防御隔壁に内側のみに限られ、舷側に接続する外側の部分は非装甲なのが特徴である。
砲塔防御は前盾140mm、天蓋水平部85mm傾斜部105mm、バーベット100mmなど。

装甲材質は1915年に開発された旧式の均質装甲が中心。それ以外では砲塔の前盾並びに天蓋傾斜部は表面硬化装甲であるKC鋼が、その他重要部位以外にはニッケル鋼や構造鋼が使用された。

続いて二番艦アドミラル・シェーアは、主に垂直装甲の範囲と装甲材質に変化が見られる。
垂直装甲は機関部にて、中甲板までの高さに80mm主装甲帯を配置し、その上に上甲板までの高さで50mmの上部装甲帯が設けられる。一番艦と比較すると上下が逆転した配置となる。(弾薬庫の一部は変わらず60mm)
そして材質は新型の均質装甲であるWh鋼を大部分に使用。これに伴い同鋼板が用いられた水平装甲並びに縦隔壁は40mmに減厚、バーベットは125mmになるなど装甲厚の増減も。

最後にアドミラル・グラーフ・シュペーは、本級の中でも最も装甲が強化された艦である。
垂直装甲は一番艦に近い形に回帰する代わりに、高さが若干減少。厚さは機関部では80mm(水線下50mm)のままだが、弾薬庫横は100mmと一気に強化。(装甲帯は重要区画全体で100mmとする説も)。
水平装甲は大部分が40mmなのは変わらず。一方で水雷防御隔壁より外側の範囲にも30mmと減厚しつつも、舷側と接続する範囲まで装甲が追加された。また弾薬庫の一部のみ70mmになった事が確認できる。   
装甲材質並びに縦隔壁、砲塔装甲などの装甲は二番艦に準ずる。

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表の解説
上の表を見てもらえれば分かるように、戦艦主砲に対しては役に立たない部分が大半であるので、下の表で扱った対中口径弾を中心に論じていく。
まず垂直装甲からだが、この部位は弾薬庫機関部ともに6インチ砲に対しては全く心配ない結果になった。やはり60mm部分が解消されたのは大きい。
8インチ砲への評価は難しい所で、同時期の巡洋艦と比較すればそこまで悪い物ではないが、8インチ砲艦へと備えとして十分かは微妙である。

続いて砲塔の垂直装甲は、巡洋艦として考えると重装甲の部類だろう。同時期の巡洋艦には砲塔防御を切り捨てた艦も少なくないが、砲塔が二基しかない本級の場合はかなり重要である。
それでも前盾に関しては、装甲帯と同じく8インチ砲だと想定される交戦距離でも抜かれるかもしれない。
ただ本級の前盾は砲室の半分ほどの高さしかなく、それよりも上は105mmの天蓋傾斜部となっており、ここに砲弾が命中する可能性も高い。
この部分は傾斜が付いている分、水平部よりも近距離で大口径砲弾に貫通されやすくなるが、通常の中小口径弾に対しては20km以遠でも耐える事が出来る。
つまり砲塔前盾が抜かれる距離でも、こっちに当たってくれれば砲弾を逸らす事が可能となる。

水平装甲は強化された70mm部分がそれなりの安全距離を得たが、一方実戦での巡洋艦は20km以遠で有効な砲撃が出来ないとしても、40mm部分は遠距離で少々不安のある結果となる。
なお結果は中甲板よりも上の18mm甲板を含むものである。これを除いた場合の安全距離は上の表で、弾薬庫19km/19.5km/12.5km/25km/16km/18.5km/22.5km、機関部10.5km/10km/5mkm/12.5km/9km/9.5km/16.5km
下の表は弾薬庫 貫通不能/貫通不能/21.5/25km 、機関部 貫通不能/17km/17.5/18.5kmとなる。

砲塔天蓋の水平部分は三隻とも85mmと排水量の割に重装甲。大きく角度がついた105mm部分を含めても、こちらは8インチ砲など対巡洋艦としてはまず問題ない。

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他ページに倣い、ここでも表に載らない部分の解説も行いたい。
先述したように、一二番艦よりも主装甲帯の上端が低くなった本艦は、その分舷側上部の非装甲部を抜いた砲弾が艦内部に侵入する割合が増えている。
このような砲弾が重要区画に達するには、中甲板内側の40mmを抜くか、中甲板の外側30mmm部分を抜いた後、水雷防御隔壁40mmから侵入するルートが主に考えられる。
中でも後者は、装甲帯が低い本艦のみ発生する可能性が生じているが、その一方で一二番艦では非装甲だった中甲板の外側に装甲を追加する事で、このルートが弱点にならないよう対策を行っていると評価できる。。
またこの30mm装甲は、基本的に砲弾よりも落角の大きい航空爆弾の防御にも効果があるだろう。
(そこからすると実際は逆の流れで、水平装甲の範囲拡大の為に装甲帯の高さが減少したという可能性もあるか)

他も見ると、煙路防御は中甲板から船首楼甲板の高さまでに40mmの縦隔壁を配置。徹甲弾の直撃には対応できないが、榴弾や弾片への防御を行っている。
続いて水中弾防御は巡洋艦サイズの艦としては厚めの水雷防御隔壁を持ち、防御区画内で炸裂した砲弾等に対応出来ると思われるが、直撃弾に対してはやや不十分か。
最後に本級には忘れていけない弱点があり、補機類が装甲区画外にある点がそれにあたる。
シュペー最後の戦いとなったラプラタ沖海戦において、同艦はここに置かれたディーゼル燃料の処理設備並びに造水装置を損傷。追跡を振り切って本国に帰還できる量の燃料を用意出来なくなり、中立国ウルグアイから許された入港時間内での修理も不可能であった為、自沈処分とされている。
機関部が直接破壊される場合と違い、すぐさま航行不能になるような致命的な物ではないが、大西洋の向こう側という本艦が置かれた環境においては喪失原因になってしまった。

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まとめなど
これまで見てきたように、本艦は姉妹艦2隻よりも一部部位が強化されている。
中でも弾薬庫の60mm装甲帯は8インチ砲防御として明らかに不十分な物だったが、それが100mmまで強化されたのは大きい。
少なくとも同時期の巡洋艦には劣らない程度になったと言えるのだが、それでも8インチ砲に対して不安な部位が所々みられる。

参考の為ラプラタ沖海戦での損傷をもう少し詳しく見ると、本艦は15km以内の距離から8インチ砲弾を2発、6インチ砲弾を18発受けている。
この中で8インチ砲弾1発は、15km程度の距離で100mmの主装甲帯上部(中甲板よりも上の部分)を貫通。背後に設けられた40mmの縦隔壁も抜くも、中甲板の水平装甲に阻まれてそこで炸裂している。
命中個所は装甲帯と中甲板の多重防御となる場所であったため、重要区画内に直接的な被害は及ばなかったが、もし命中個所が下にずれていた場合、大きな損傷を与えていた事が予想される。
他の命中弾では、6インチ砲弾が主砲塔に三発命中するもすべて反跳。また40mmの中甲板を貫通した砲弾(おそらく6インチ砲)が存在したというが、こちらも実質的な被害は与えていない。
結果として、自沈の原因となった補機の被害以外では、一部副兵装や艦橋並びに方位盤へも損傷を受け、やや戦闘能力を低下させていたが、主機並びに主砲の機能、そして艦の浮力といった部分には殆ど影響はない程度の損傷に留まっている。

攻撃面も見ていくと、本級の搭載する52口径28cm砲は54.5口径砲に比べより軽い砲弾を使用、最大射程も短い。(それでも36kmもあるが)
つまり弾道的に54.5口径砲に対して水平装甲への貫通力で上回るが、垂直装甲へは劣るものとなる。と言っても垂直装甲への威力も、普通に8インチ砲を大きく上回るものではある。
20km程度の距離でも、ザラ級やデモイン級を含む巡洋艦の垂直装甲に対して不足することはない。
また高初速である為水平装甲への貫通力は低いイメージもあるが、一部の例外を除き当時の巡洋艦の水平装甲は1~2インチ程度に過ぎない。
大抵の戦艦主砲に対して本級の40mm装甲が近距離以外で役に立たないのと同じように、この程度の厚さに対しては本級の主砲は20km以内でも有効な貫通力を発揮可能である。

なおこの砲は撃沈するには至らないものの、英ヨーク級重巡エクセターに7発の命中弾を与え戦闘不能にしているが、この時は弾頭信管付きの通常弾(つまり榴弾)を使用している。
榴弾には徹甲弾のような貫通力はないが、非装甲部に対しては広い範囲に弾片による被害を与え、炸裂せずに船体や砲塔を突き抜けてしまう事もない。艦の奥深くに突入して致命傷を与える可能性は少ないが、より確実に敵艦の戦闘能力を削ぐことを狙った選択と言える。
実際命中時には装甲の薄い砲塔や艦橋に大きな被害を与えており、命中個所によっては浸水による速力低下を引き起こす等、目的を達していると言えるだろう。

まとめると、本艦はその火力さえ活かす事が出来れば、エクセターのみならず通常の巡洋艦全般に対しても、個艦で優位を持つと考えられる。
ただ何度も言うようにその防御力は8インチ砲に対して万全とは言えず、一方的に多数を被弾した場合などは危険である。
その「多数の8インチ砲弾」を一隻で投射してくる上に、水平装甲にも優れるデモイン級と比較すると少々厳しい物があり、こちらは一発に期待するしかないか。
また上で比較してきた艦(デモイン級を除く)との戦闘となると、防御は無いに等しく、火力も10km前半にならない限り不足、そして速力も勝るものでないように、全体的に劣ることは否めない。
1万トン台という艦の規模を考えると仕方がない。

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アドミラル級巡洋戦艦フッド

装甲厚
垂直防御 305mmKC+19mmHT×2 傾斜12度 → 32mmHT+19mHT 傾斜30度内傾   326
砲塔前盾 381mmKC傾斜30度(内傾)
バーベット(露出部) 305mmKC
バーベット(艦内部) 178mmKC+25mmHT×2 傾斜12度 → 127mmKC

水平装甲(弾薬庫) (38mmHT)  32mmHT+19mmHT → 25mmHT+32mmHT+19mmHT → 25mmHT +25mmHT  ≒ 133/111mmHT ~ 116/93mmHT     
水平装甲(機関部) 32mmHT+19mmHT → 25mmHT →  32mm+19mmHT ≒ 86/60mmHT
砲塔天蓋 127mmKNC水平~傾斜約3度/横傾斜数度

上部装甲帯→甲板 あり
上部装甲帯→傾斜部 あり 178mmKC+25mmHT×2 傾斜12度 → 32mmHT+19mHT 傾斜30度内傾 

フッド安全距離

 装甲部位\艦砲

33cm52口径
(ダンケルク)

32cm43.8口径
カブール

15インチ42口径
(レナウン)
 

28cm54.5口径
(シャルンホルスト)

356mm45口径
(金剛) 

12インチ50口径
(アラスカ)

8インチ55口径
(デモイン)

 垂直装甲 17km以遠 13km以遠 23km以遠 15.5km以遠
17km以遠 15.5km以遠 3km以遠
 砲塔前盾 35.5km以遠 6km以遠  安全距離なし 11km以遠 17km以遠 12.5km以遠 貫通不能
バーベット 25km以遠
(26.5km以遠)
14.5km以遠
(16.5km以遠)
28.5km以遠
(安全距離なし)
16.5km以遠
(19km以遠)
20km以遠
(23km以遠
18km以遠
(20.5km以遠)
4.5km以遠
(6.5km以遠)
バーベット(艦内部) 25.5km以遠
14.5km以遠
25.5km以遠 15km以遠
19.5km以遠 16.5km以遠 3km以遠
水平装甲(弾薬庫) 31km
~28.5kmまで
25km
~24kmまで
 21km
~15.5kmまで
31km
~29.5kmまで
 22.5km
~20kmまで
26.5km
~25kmまで
25.5km
~24.5km
水平装甲(機関部) 21kmまで 20kmまで 9.5kmまで 26kmまで 11kmまで 20kmまで 22.5kmまで
 砲塔天蓋 32.5km
~30.5kmまで
26km
~24.5kmまで
25.5km
~24kmまで
32.5km
~31kmまで
26.5km
~24.5kmまで
27.5km
~26kmまで
26.5km
~25kmまで

垂直装甲(30) 12km以遠 7.5km以遠 16.5km以遠 9.5km以遠 11.5km以遠 10.5km以遠 貫通不能

戦間期の高速戦力としてフッドは忘れてはいけないが、どちらかと言うと主力戦艦の要素が強いように思うのでおまけで。

舷側装甲帯の最も厚い部分は、傾斜やバッキングを入れれば上で扱った艦よりも強力な物と言える。
その他の部位も機関部の水平装甲を除けば有効と言っていい。
ただし本級の装甲配置から発生する、上部装甲帯などへの被弾の場合は、通常の交戦距離でも重要区画が破られる可能性は存在する。
くわしくはイギリス戦艦編で。

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以下は未成・計画艦

超甲巡(日本戦艦編と同じくVH装甲の品質は高めに設定)

装甲厚
垂直装甲 190mmVH改(KC n/Aとして計算) 傾斜20度
砲塔前盾 不明
ベーベット 210mmVH改
水平装甲 125mmNVNC(装甲甲板以外の厚さは不明)
砲塔天蓋 不明

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

超甲巡安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 23.5km以遠 18.5km以遠 26.5km以遠 20.5km以遠
 23.5km以遠 22.5km以遠 9.5km以遠
バーベット 29km以遠
(31km以遠)
20km以遠
(22.5km以遠)
安全距離なし 23.5km以遠
(26km以遠)
28.5km以遠
(31.5km以遠
25.5km以遠
(29.5km以遠)
9km以遠
(10.5km以遠)

水平装甲 31.5kmまで 25.5kmまで  25kmまで 32kmまで  26kmまで 27kmまで 26kmまで

垂直装甲(30度) 19.5km以遠、15.5km以遠、23km以遠、17km以遠、20.5km以遠、19.5km以遠、6km以遠

垂直装甲(30) 19.5km以遠 15.5km以遠  23km以遠    17km以遠   20.5km以遠 19.5km以遠  6km以遠 

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P級装甲艦

装甲厚
垂直装甲1 120mmWh → 30mmWw傾斜約10度
垂直装甲2 120mmWh → 100mmWh傾斜約35度内傾
砲塔前盾 140mmKC n/A
バーベット 125mmWh
水平装甲 20mmST52 → 70mmWh
砲塔天蓋 85mmWh

上部→甲板 あり
上部→傾斜部 あり 40mm → 100mmWh傾斜約35度内傾
上部→縦隔壁 なし

P級安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲1 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし
23.5km以遠
 垂直装甲2 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 39km以遠
安全距離なし 安全距離なし 12km以遠
 砲塔前盾 安全距離なし 安全距離なし  安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 22.5km以遠
水平装甲 22kmまで 20.5kmまで 14.5kmまで 26kmまで 18kmまで 20.5kmまで 23kmまで

垂直装甲1(30) 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 36km以遠    安全距離なし 35km以遠  19km以遠 
垂直装甲2(30) 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 31km以遠   安全距離なし 34.5km以遠  10.5km以遠 

こちらも中小口径砲を追加

装甲部位\艦砲 5インチ 14cm 6インチ 8インチ
垂直装甲1 2.5km以遠 5km以遠 9.5km以遠 18km以遠
垂直装甲2 1km以遠 3km以遠 4km以遠 10.5km以遠
砲塔前盾 貫通不能 貫通不能 9km以遠 20km以遠
水平装甲 貫通不能 貫通不能 22kmまで 26kmまで

垂直装甲1(30) 貫通不能 4.5km以遠 8km以遠 16.5km以遠
垂直装甲2(30) 貫通不能 2.5km以遠 3km以遠 9km以遠

Z計画にて12隻の大量建造が計画されたP級装甲艦(1939年より巡洋艦に類別変更)について。
このページの冒頭で説明したように、ドイッチュラント級装甲艦は「戦艦より速く、巡洋艦より強い」艦として(主にフランス海軍から)大きな脅威と受け止められていた。
しかし同海軍が建造したダンケルク級の登場などをきっかけとして、主力艦全般の速力は大きく向上。同級は「戦艦より弱く、速くもない」という中途半端な戦力になってしまった。

そこでヴェルサイユ条約の制限がなくなった今、同級の強化版を整備しようと言う流れになる。
より強力な装甲艦というと、シャルンホルスト級の原型である装甲艦D・E(当初の要求は1万8千トン、28cm砲6門、28ノット以上)と似た計画理由だが、その二隻はダンケルク級への対抗から、主に装甲を強化して直接戦闘能力を向上させた艦である。
対する本級を見ていくと、まず主砲は2万2千トン台の船体に54.5口径28cm砲を連装2基6門搭載。シャルンホルスト級と同じ長砲身砲となったが、口径と門数は据え置きである。
加えて後述するように装甲の強化も控えめな物に留まっているが、その代わりに速力を大幅に強化。機関はドイッチュラント級に引き続きディーゼルのみを使用しながらも、出力は4倍にも向上し、最大速力34ノットを発揮可能。
この速力で各国主力の高速化へ対応を図った艦と言えるだろう。

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次に本題の装甲配置について、利用できる資料が機関部断面のみと限界はあるが、把握している範囲を中心にまとめて行きたい。
まず船体形状は長船首楼型だが、船首楼甲板が後部主砲の途中で途切れる形に。前級と同じく船体中央部にはもう一層甲板(最上甲板)が存在する。
また本級は機関室が上甲板の高さまである事により、重要区画上を通る甲板は大部分で最上、船首楼、上甲板の三層となる。(中、下甲板は機関部では機関室と外板の間の区画のみに存在)

垂直装甲は上甲板の高さまでに傾斜のない120mmの主装甲帯を配置。それよりも上(上甲板から船首楼甲板)の外殻にも40mmと弾片防御程度の装甲が施される。
装甲帯の背後には厚さ30mmの縦隔壁があり、水雷防御並びに弾片防御として機能する。
続いて水平装甲は上甲板が70mmとなり、これは外側にて厚さ100mmの傾斜部(垂線に対して40度程内傾)となり下側へ向かうが、装甲帯の下端には接続せず、先述した縦隔壁に接続する部分で途切れている。 
またこの甲板よりも上部にある、船首楼もしくは最上甲板にも20mmの薄い水平装甲あり。
弾薬庫横の具体的な配置は不明だが装甲厚に関しては同一と思われる。また重要区画外の艦首尾にも、前級や同時期の艦の例から若干の装甲が施される事が予想される。
砲塔防御はシュペーと同等。装甲材質は時期的にWhを中心に一部KCやWwが使用されるだろう。

このように少なくとも判明している部分では、ドイッチュラント級より大きな変化が見られる。
最たるものは同級で見られた傾斜装甲帯を廃止し、また装甲帯の裏に厚い甲板傾斜部を設け多重防御とした点だろう。これはシャルンホルスト級以降のドイツ大型水上艦艇の特色であり、同じZ計画のH級戦艦やM級軽巡とも共通する。
その一方で傾斜部は装甲帯の下端に接続しない点、傾斜角度は40度とあまり深くない(その分装甲帯を貫通した砲弾に対する撃角が深めになり、防御効果は薄い物になる)点は本級のみに見られると言って良い特徴である。

まとめると、本級の配置はドイッチラント級よりもH級やM級と言った同時期の艦に近づくも、完全に同一とはならない。特に水平装甲が一層式で、範囲も水雷防御隔壁の部分で途切れ装甲帯に接続しないなど、前級の名残のようにも思える部分を残すのが興味深い点である。

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表の解説 
上で見てきた通り、本級の120mmの装甲帯を貫通した砲弾は命中箇所や弾道によって、30mm縦隔壁か100mm傾斜部のどちらかに命中する二種類のルートが存在する。表では前者を「垂直装甲1」、後者を「垂直装甲2」とした。
「1」の方はシュペーの弾薬庫と同程度。増厚と傾斜装甲の廃止が打ち消し合う形になったと言える。一方多重防御が強力な「2」の方は、8インチ砲防御としてはやや過剰な防御力を発揮可能である。
戦艦主砲相手では傾斜部含めてもあまり効果はないという結果にもなったが、前級と比較して総合的には強化と言えるだろう。

砲塔防御はシュペーと同等との事だが、砲塔前盾はこの時期にはKC鋼の性能が向上していることから、8インチ砲に対する防御力はやや向上する結果に。
(前盾以外はシュペーの表を参照)
なお最初に建造される3隻の主砲は、42年に38cm砲に換装する予定だったシャルンホルスト級の物を流用予定だったとされる。
本級の砲塔と比べると装甲厚の違いは言うまでもなく、傾斜部の形状なども大きく異なるが、重量などを考えると砲室のみは新造となるのだろうか。

水平装甲は途中で傾斜部になる都合でやや範囲は限られるとは言え、厚さは70mmとなり、船首楼もしくは最上甲板の20mmも防御に加わる。 
主な水平装甲はシュペーの弾薬庫一部のみが有していた厚さまで強化され、また装甲艦D・Eの機関部とも同等に(後者は最上層の甲板もやや厚い二層式防御なのでその分劣るか)
重要区画全体がこの厚さとすると、巡洋艦との戦闘でこの部分を破られる可能性は大きく減少している。

また表に載らない部分として本級の配置を改めて見ると、装甲帯上端と主な水平装甲を担う甲板は共に上甲板で、同じ高さにある。そして上甲板の水平装甲は途中で傾斜部となるので、装甲帯上端に接続する形にはならない。
以下の二点から、本級の配置では装甲帯より上の外殻(厚さ40mm)を抜いて侵入した砲弾が、甲板傾斜部に直接命中する可能性が存在する。
このルートは一般的に弱点となりやすいが、本級の場合8インチ防御としては微妙だが、6インチ以下に対しては十分であり、そこまで致命的な弱点というわけではないようだ。
おそらく傾斜部の100mmという厚さは、主装甲帯を抜いた砲弾への防御と言うよりも、このルートの防御の為に設けられたのだろう。
なお砲弾が30mm縦隔壁の方へ命中した場合、傾斜部よりも防御的には大きく弱体な物となるが、位置関係的によほどの大落角でないかぎりこのようなルートを辿る可能性は低い。

それ以外の部分では、煙路防御を担当する縦隔壁は20mmに、水中弾へ対応する水中防御隔壁も30mmと、どちらも前級から減厚している。
ただ件の問題を引き起こす補機の位置については、機関配置はH級と同様の物が採用されたと言う。その場合補機は装甲区画内で防御されている事になるので、これも本級の改善点と言えるだろう。

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最後に本級は、先述したようにシャルンホルスト級と同じ54.5口径砲を採用。
既存の装甲艦と口径は同じだが、垂直装甲への威力で上回り、巡洋艦はもちろん上で紹介した艦へも有効な打撃を与える可能性は向上している。
一方で防御面は上で見てきたように一部が強化されつつも、8インチ砲に対して微妙な部分も存在する。
自艦主砲を含む大口径砲への防御は、水平装甲のみ大きく改善されたが、未だに他の部分の防御力は期待できず、直接殴り合う主力艦としては不十分と言えるだろう。
ただ本級は34ノット弱もの計画速力を持つことから、再び大抵の主力艦から逃げる事の出来る速力を得たのは大きい。
ドイッチュラントでは厳しいデモイン級に対しても、これらの強化によりその不利は大きく軽減されているだろう。

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O級巡洋戦艦

装甲厚
直装甲 190mmKCn/A → 80mmWh傾斜60度内傾? → 45mmWw

砲塔前盾 220mmKCn/A 傾斜9度?
バーベット(露出部) 180mmKCn/A
バーベット(艦内部) 90mmWh → 145mmKC
水平装甲1 50mmWh → 20mmSt52 → 80mmWh ≒ 113mm?Wh
水平装甲2 30mmWh → 60mmWh ≒ 76mm?Wh
砲塔天蓋 50mm?

上部装甲帯→甲板 あり
上部装甲帯→傾斜部  不明

O級安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 32.5km以遠 19.5km以遠 安全距離なし 20km以遠
 30.5km以遠 25km以遠 貫通不能
砲塔前盾 36km以遠 24km以遠 安全距離なし 28.5km以遠
安全距離なし 33.5km以遠 11km以遠
 バーベット(露出部)  32km以遠
(35km以遠)
24km以遠
(26.5km以遠)
安全距離なし   28km以遠
(30.5km以遠)
33.5以遠
(35km以遠) 
31km以遠
(34km以遠)
 11.5km以遠
(13km以遠)
バーベット(艦内部) 41km以遠  20.5km以遠  安全距離なし   22km以遠 30.5km以遠  25km以遠  6.5km以遠 
水平装甲1 30.5kmまで 25kmまで 23.5kmまで 31.5kmまで  25kmまで 26kmまで 26kmまで
水平装甲2 22kmまで 20kmまで 14kmまで 26kmまで 17.5kmまで 20kmまで 23kmまで
砲塔天蓋 13kmまで 12kmまで 9.5kmまで 18kmまで 11kmまで 11.5kmまで 19kmまで

垂直装甲(30) 24.5km以遠 12.5km以遠 安全距離なし 7.5km以遠 23.5km以遠  18km以遠  貫通不能

装甲配置に関しては不確かな部分が殆どだが、ここではドイツ戦艦編で紹介した複数の説の内、A方式を採用した。

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クロンシュタット級

装甲厚
垂直装甲 230mmKC+18mm傾斜6度
砲塔前盾 305mmKC 25度もしくは9度(内傾) 表では25度の方を採用
バーベット 330mmKC
水平装甲 12mm → 90mmKNC → 30mmKNC ≒ 107/93mmKNC
砲塔天蓋 125mmKNC水平~傾斜5度 (もしくは25度傾斜部)

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

 

 

クロンシュタット級安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 27km以遠 20km以遠 安全距離なし 23.5km以遠
 27km以遠 25.5km以遠 9.5km以遠
砲塔前盾 安全距離なし
17.5km以遠 安全距離なし 17km以遠
30km以遠 25.5km以遠 1km以遠
バーベット 23km以遠
(25.5km以遠)
13.5km以遠
(15km以遠)
25.5km以遠
(29km以遠)
15km以遠
(17km以遠)
17.5km以遠
(20km以遠
15.5km以遠
(18.5km以遠)
3.5km以遠
(5.5km以遠)

水平装甲 27kmまで 22.5kmまで 19kmまで 28.5kmまで  22kmまで 23.5kmまで 25.5kmまで
砲塔天蓋 32.5km
~28.5kmまで
26km
~24kmまで
 25.5km
~22kmまで
32km
~29.5kmまで
 26.5km
~23.5kmまで
27km
~24.5kmまで
26km
~25.5kmまで

垂直装甲(30) 21.5km以遠  16km以遠   28km以遠  19km以遠 23.5km以遠  21km以遠 
6.5km以遠

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スターリングラード級

装甲厚
垂直装甲 180mmKC傾斜15度
砲塔前盾 240mmKC傾斜30度内傾 (推定)
バーベット(露出部) 235mmKC
バーベット(艦内部) 50mmKNC → 185mmKC
水平装甲 50mm → 70mmKNC → 15mm ≒ 104/99mm
砲塔天蓋 125mmKNC水平~傾斜5度

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

 

スターリングラード級安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 32km以遠 23km以遠 30km以遠 24.5km以遠
 27.5km以遠 27.5km以遠 12.5km以遠
砲塔前盾 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 安全距離なし 8km以遠
バーベット(露出部) 29km以遠
(32km以遠)
20km以遠
(22.5km以遠)
安全距離なし 23km以遠
(26km以遠)
28km以遠
(31km以遠
26km以遠
(29km以遠)
9km以遠
(10.5km以遠)

バーベット(艦内部) 安全距離なし 18.5km以遠
安全距離なし 19.5km以遠
34.5km以遠 21.5km以遠 5km以遠
水平装甲 28kmまで 23.5kmまで  21kmまで 29.5kmまで  23kmまで 24.5kmまで 25kmまで
砲塔天蓋 32.5km
~28.5kmまで
26km
~24kmまで
 25.5km
~22kmまで
32km
~29.5kmまで
 26.5km
~23.5kmまで
27km
~24.5kmまで
26km
25.5kmまで

垂直装甲(30) 24.5km以遠  20.5km以遠   29km以遠  22km以遠 25.5km以遠  24.5km以遠 
10km以遠

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オランダ1047巡洋戦艦案

装甲厚
垂直装甲 225mmKC n/A+17mm 傾斜18度 → 30mmST90 傾斜62度内傾 → 40mmST90
砲塔前盾  300mmKC n/A 傾斜約20度内傾
バーベット 250mmKC n/A
水平装甲 20mmST90 → 100mmST90+15mm → 30mmST90 ≒ 128/116mm
砲塔天蓋 不明 150mm水平傾斜20度

上部装甲帯→甲板 なし上部装甲帯自体を持たない為
上部装甲帯→傾斜部 なし

1047案安全距離

 装甲部位\艦砲

52口径33cm
(ダンケルク)

43.8口径32cm
カブール

42口径15インチ
(レナウン)
 

54.5口径28cm
(シャルンホルスト)

45口径14インチ
(金剛) 

50口径12インチ
(アラスカ)

55口径8インチ
(デモイン)

 垂直装甲 19.5km以遠 14.5km以遠 23.5km以遠 15.5km以遠
19km以遠 17.5km以遠 5km以遠
砲塔前盾 38km以遠 20km以遠 安全距離なし 19km以遠
26.5km以遠 23.5km以遠 2.5km以遠
バーベット 26.5km以遠
(28km以遠)
16.5km以遠
(18.5km以遠)
安全距離なし 21.5km以遠
(24km以遠)
23km以遠
(26km以遠) 
21km以遠
(24km以遠)
6.5km以遠
(8km以遠)

水平装甲 31kmまで 25kmまで  23.5kmまで 31.5kmまで  25kmまで 25.5kmまで 27kmまで
 砲塔天蓋 34.5km
~16kmまで
27.5km
~17kmまで
27km
~安全距離なし
34km
~22kmまで
28km
~14kmまで
29km
~16kmまで
貫通不能
~26kmまで

垂直装甲(30) 14.5km以遠  11.5km以遠   18.5km以遠    11.5km以遠    15.5km以遠   14km以遠  
  1km以遠  


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その他にも取り上げなかった計画や研究案も以下のように多数存在する。
まず英海軍は条約期に2万トン級の小型戦艦案を研究し、1940年には9.2インチ砲搭載の大型巡洋艦を計画。
ドイツは独シャルンホルスト級の原型である装甲艦D・E、フランスも同じくダンケルク級へと発展した17,500t戦艦があり、またイタリアも条約期に23000~26000t級戦艦案や17500tポケット戦艦案が存在する。
そしてソ連はこの種の艦がスターリンのお気に入りだった事もあって数が多く、クロンシュタット級に繋がる22号と25号計画艦、伊アンサルド社提供の巡洋戦艦案などの他、戦後にはスターリングラードと共に検討された22cm砲搭載の66号計画艦も。
また列強海軍以外では、オランダが1047巡戦案と比較研究していた24cm砲搭載の16,000t装甲巡洋艦案も含める事が出来るだろう。

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