艦砲と装甲から見る各国新戦艦

2015年1月公開

※注意 このページは管理人の趣味と妄想でできています。前のページの注意書きを読んでから閲覧することをお勧めします。

今回は扱う艦も多いので、さっそく紹介に移りたい。コメントも短めに。
以下のページは登場艦のスペック紹介と解説なので、前置きなしで結果を見たい方は次のページへどうぞ。

注意 主砲貫通力は前回と同じく、第一次大戦期の表面硬化装甲(日本だとVC鋼に相当)と均質装甲(KNC鋼)に対するNAaB1.3を用いた推定値となっている。
また装甲の材質や傾斜角は一部推定(特に欧州戦艦)。 厚さも1インチと40lbsを一緒にしたりしなかったりで微妙にずれが生じている。

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リシュリュー級戦艦(竣工時)

一番艦リシュリュー 1935年起工 1940年竣工 1943年米国にて完工
全長242m 全幅33.1m
基準排水量 3万7千トン
15万馬力 30ノット

搭載主砲 45口径1935年式38cm砲 砲弾重量890kg 初速830m/s  最大射程41.7km
貫通力 
18.3km 垂直518mm 水平84mm
27.5km 垂直394mm 水平114mm

装甲厚
垂直装甲 10mm→330mmKC+18mm傾斜15.4度 → 50mmNC傾斜24度内傾
砲塔前盾 434mmKC傾斜30度内傾
バーベット 406mmKC
水平装甲(弾薬庫) 25mm→170mmNC+10mm→40mmNC ≒ 199/183mmNC
水平装甲(機関部) 25mm→150mmNC+10mm→40mmNC ≒ 180/164mmNC
砲塔天蓋 170mmKC~195mmKC傾斜約7度  フランス戦艦の砲塔天蓋は表面硬化装甲(つまりKC鋼)であるとの説を採用

上部装甲帯→甲板 なし
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 平甲板型(中央楼型)

コメント
今回は竣工順に紹介するということで、まずはフランスのリシュリュー級戦艦から。

本級はドイツのポケット戦艦建造に端を発して、条約体制を脅かす事になる欧州海軍の建艦競争の結果誕生した戦艦である。
そして基本的には、仮想敵であるイタリア並びにドイツ海軍の新戦艦に対抗できる性能を求められた艦となる。

設計上の特徴としては、やはり前級ダンケルク級に引き続き、四連装砲塔二基を前部に集中配置した点が挙げられる。
防御面は小型化されたバイタルパートの恩恵もあり、厚さのみを見るとかなり優秀で、特に水平防御は新戦艦の中で大和型に次ぐ厚さである。
よくこの排水量に収めることができたと言いたくなる。(戦後就役したジャンバールは普通に四万トン台だったらしいが)

ただし上の装甲厚の欄にもあるように、リシュリュー級に使用された装甲の具体的な品質については今回調べた範囲では全く分からなかった
その為計算結果にはズレが生じている可能性が高い。詳しくは次ページの解説を参照。

主砲の38cm砲は高初速を誇り、低弾道の為水平装甲への効果は犠牲になったが、垂直装甲に対する貫通力ではなんと前のページで扱った旧式16インチ砲すら上回る結果となった。
実際には散布界が劣悪で、主砲の腔発事故以降は初速が引き下げられて運用されている。しかしここでは最強設定ということで竣工時のデータを使用したい。
なお使用する1936年式徹甲弾は日本の九一式と同じく、水中での弾道を意識した構造が見られるが、前回と同じく水中弾は扱わない。
(また本級は後に米国製の徹甲弾も使用している。こちらも初速は抑えられているが、米国砲弾の特徴として弾体強度や被帽の形状から斜撃に強い面があり、実際の性能はこちらの方が上と思われる。ただ色々どうかと思うので、今回はオリジナルを優先した)  


本級の二隻は、フランスの本土陥落により数奇な運命を辿った艦である。
両艦とも(連合国の)戦艦を相手に砲撃戦を経験しており、
中でも二番艦のジャンバールは今回取り扱う米16インチSHSの直撃を受けている。
計算結果と共に、この時の被害状況を含め本級の評価が出来ればと思う。
  

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リットリオ級戦艦

一番艦リットリオ 1934年起工 1940年竣工
全長238m 全幅32.9m
基準排水量 4万1千トン
馬力 13万馬力 30ノット

搭載主砲 50口径1934年式381mm砲 砲弾重量885kg 初速870m/s  最大射程42.8km
貫通力 
18.3km 垂直531mm 水平84mm
27.5km 垂直401mm 水平109mm

装甲厚
垂直装甲 70mmNCV傾斜11度 → 280mmTC 傾斜11度 → 36mmDS
砲塔前盾 350mmTC 傾斜30度内傾      
バーベット(露出部)350mmTC
バーベット(艦内部)70mmNCV → 280mmTC
水平装甲(弾薬庫) 36mmNCV+9mmDS → 150mmAOD+12mmDS ≒ 174mmAOD
水平装甲(機関部) 36mmNCV+9mmDS → 100mmAOD+12mmDS ≒ 126mmAOD
砲塔天蓋 200mmAOD傾斜約5度

上部装甲帯→甲板 あり
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 長船首楼型(通常の長船首楼型とは異なり、船首楼甲板が艦尾付近まで伸びる形)

コメント
続いてはフランス海軍を仮想敵とするイタリア海軍の新戦艦リットリオ級(ヴィットリオ・ヴェネト級とも)。
イタリア軍に関しては、第二次大戦時の戦いぶりを揶揄するネタが結構広まっていると思うが、残念ながら海軍についてもその評価は一部的を得ている。
実際の所、日本以上に逼迫した燃料事情に加えて空軍との連携も上手く行かない中で、英海軍相手に奮戦したものの、その能力を十分に発揮できたとは言い難いだろう。
しかし各艦艇の性能が劣っていたわけではなく、本級もベネディット・ブリンの時代から独創的な艦を産み出してきたイタリア海軍の名に恥じない高性能艦である。

それどころかスペック上の性能で本級を見た場合は、欧州海軍で最強の戦艦だという説すらある。
主砲は口径こそ15インチだが、かなりの高初速で運用され、垂直貫通力は通常の16インチ砲を上回り、アイオワ級の主砲にさえ匹敵する。
(もちろん弊害もあり、散布界が悪化し砲身の劣化も早い。こちらも実際はやや遅い初速で運用されている。)
またスマートな船体とは裏腹に防御面もよく考えられたもので、有名なプリエーゼ式水雷防御だけでなく、舷側装甲も非常に独創的な構造である。(詳しくは次ページで)
はたしてスペック対決であるこのページでは欧州最強説は証明されるのだろうか。

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ビスマルク級戦艦

一番艦ビスマルク 1936年起工 1940年竣工 
全長251m 全幅36m
基準排水量 4万1700トン
13万8千馬力 31~29ノット

搭載主砲 47口径34年式38cm砲 砲弾重量800kg 初速 820m/s  最大射程36.5km
貫通力 
18.3km 垂直470mm 水平79mm
27.5km 垂直354mm 水平117mm

装甲厚
垂直装甲(弾薬庫)  320mmKC n/A 傾斜10度 → 120mmWh 傾斜60度内傾 → 45mmWw
垂直装甲(機関部) 320mmKC n/A → 110mmWh 傾斜68度(内傾) → 45mmWw
砲塔前盾 360mmKC n/A 傾斜9度内傾
バーベット(露出部) 340mmKC n/A
バーベット(艦内部) 145mmKC n/A 傾斜17度→ 220mmKC n/A
水平装甲(弾薬庫) 50mmWh → 20mmSt52 → 95mmWh ≒ 126mm?Wh
水平装甲(機関部) 50mmWh → 20mmSt52 → 80mmWh ≒ 113mm?Wh
砲塔天蓋 130mmWh~180mmWh傾斜約25度

上部装甲帯→甲板 あり
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 平甲板型

コメント
ビスマルクについては詳しくコメントする必要はないだろう。第二次大戦期の戦艦の中でも特に濃い戦歴を持っている艦である。
そのためか毀誉褒貶も激しく、評価が分かれる艦だろう。否定的な意見の中には「一次大戦時の思想どまりの最新鋭旧式戦艦」にすぎないという意見すらある。
確かに装甲を見ていくと、舷側装甲が(船体中央で)傾斜していない、水平防御が薄いなど数字上の防御力はあまり優秀とは言えない。
また実際の図面を見ると分かりやすいが、装甲配置もここで取り上げる他国新戦艦よりは、軍縮条約前に竣工した旧式艦の改装後の姿に似ているのも事実だろう。
一方でビスマルクやティルピッツが沈むまでに見せた異常なしぶとさを理由に、ドイツらしい堅牢な設計と評価する意見もある。

余談だが、とある海戦ゲームにて英DoYを操作してシャルンホルストを砲撃していたら、一向に沈まない(それどころか10km以内でも装甲が貫通できない)という事態があり、
何かおかしい、と思い登場艦の解説ページを見たところ、「ドイツ艦は優秀なヴォタン鋼を使用しているため全部位の装甲厚を1.2倍で計算しています」とあった。
なぜ艦の水平装甲(と傾斜部)に使われているヴォタン鋼(Wh鋼)で全部位の装甲値が上がるのだろう。それ以前になぜドイツだけ……
実際にドイツ艦の垂直防御に使用されているKC n/Aは、
本家クルップ社の改良型だけあって優秀なことに変わりはないが。
追記 この件に関して
少し調べてみた 

話が逸れてしまったが、主砲38cm砲は軽めの砲弾を高初速で発射する、近距離戦向けのドイツ式の砲である。
上記2級の38cm砲ほどではないものの、近距離での垂直貫通力は旧式の16インチ砲に匹敵し、遠距離砲撃も可能な最大射程を持っている。
攻撃面は他の艦に決して遅れをとるわけではないが、今回の問題は防御面である。
かなりいい加減な計算を続けるこのページだが、ここで自分なりのビスマルク評が出来たら幸いである。

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キングジョージ五世級戦艦

一番艦キングジョージ五世 1937年起工 1940年竣工
全長227m 全幅34.2m
基準排水量3万6千トン
11万馬力 28.5~27.5ノット
搭載主砲 BL 45口径14インチマーク7 砲弾重量721kg 初速 757m/s 最大射程35km
貫通力 
18.3km 垂直404mm 水平81mm
27.5km 垂直305mm 水平147mm

装甲厚
垂直装甲(弾薬庫)  374mmCA+22mmDS傾斜約4度→ 22mmDS
垂直装甲(機関部)  349mmCA+22mmDS → 22mmDS
砲塔前盾 324mmCA傾斜なし
バーベット  324mmCA
水平装甲(弾薬庫) 12mmDS+19mmDS → 149mmNCA+12mmDS  ≒ 165mmNCA
水平装甲(機関部) 12mmDS+19mmDS → 124mmNCA+12mmDS  ≒ 140mmNCA
砲塔天蓋 149mmNCA(前部微傾斜)

上部装甲帯→甲板 なし
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 平甲板型

コメント
今回2クラスを扱うイギリス海軍、まず1つ目はキングジョージ五世級(KGV級)。

自国が推し進めた軍縮条約の規定を一人だけ真面目に守った(というより情勢的に守ったまま建造せざるを得なかった)結果誕生してしまった、新戦艦唯一の14インチ砲搭載艦である。
これに加えビスマルクや日本海軍航空隊と戦った二番艦プリンス・オブ・ウェールズのイメージもあり、弱体な印象を受けるかもしれない。

主砲に対して防御面がかなり重視された艦となっており、特に垂直装甲は大和型に次ぐ厚さが施されている。
配置は傾斜装甲の廃止という一見前級ネルソン級から逆行する選択を取っているが、代わりに装甲範囲(高さ)が大きく拡大している点も特徴だ。
主砲は口径の割にやや重めの砲弾を中程度の初速で運用する物で、やはり垂直装甲への貫通力は今回扱う艦砲の中でも最も低い。対して水平装甲への効果はそれなりといった所。
(なおネルソン級の16インチ砲同じく、一般に語られる貫通力の数値と比べると垂直装甲への値は高いものとなっている)
初期不良に悩まされていた点を除いても、サイズ相応な性能である事から、15インチ以上を持つ他国戦艦に対してハンデとなる事は否めない。

このように性能の話だけをすると中々表現に困る部分もある艦だが、速力的にも高速で(燃費は良くないが)第二次大戦時の戦場に対応しやすいなど良い点を持つ艦である。
むしろ性能よりも、国難の特に「そこにいた」兵器である、という点で評価されるべき部分が多い艦かもしれない。
ただし戦艦であるかぎり、敵戦艦との直接戦闘能力も重要である。攻防の面でも本級を評価していこう。



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ノースカロライナ級戦艦
(1945年時)

一番艦ノースカロライナ 1937年起工 1941年竣工 
全長217.8m 全幅33m
基準排水量 3万8400トン
12万馬力 27~28ノット

搭載主砲 45口径16インチマーク6 砲弾重量1225kg 初速701m/s  最大射程33.7km
貫通力 
18.3km 垂直475mm 水平102mm
2
7.5km 垂直368mm 水平183mm

装甲厚
垂直装甲(弾薬庫) 305mm classA+19mmSTS傾斜15度 → 51mmSTS傾斜約10度
垂直装甲(機関部) 305mm classA+19mmSTS傾斜15度
砲塔前盾 406mmclassB 傾斜41度内傾
バーベット  406mmclassA
水平装甲(弾薬庫) 38mmSTS → 91mm classB+36mmSTS→51mmSTS ≒ 157mm classB
水平装甲(機関部) 38mmSTS → 91mm classB+36mmSTS→16mmSTS ≒ 139/134mm classB
砲塔天蓋 178mmclassB

上部装甲帯→甲板 なし
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 平甲板型

コメント
一方イギリスと同じく、途中まで軍縮条約を守りながらも強力な戦艦として仕上がったのがノースカロライナ級戦艦である。
元は条約制限内の14インチ砲搭載艦として設計されたもの、日本の新戦艦が16インチ以上の砲を搭載する艦を建造すると判明。
エスカレーター条項により制限が拡大したことで16インチ砲を搭載、排水量も3万5千トンをやや超える艦として完成した。

特筆すべきは21ノットが基本だった旧式の米戦艦とは比べ物にならない速力だろう。旧式戦艦とほぼ変わらない機関重量で3倍の馬力が必要とされたのだが、それを見事にクリアしている。
当初は欧州の新戦艦に対応でき、空母との共同作戦に適した30ノットとなる予定もあったが、防御力の問題と、空母との作戦には未だに速力不足と判断されたため、やや遅い28~27ノットに抑えられた。
これは日本の金剛型(改装により30ノットを発揮できるが、米軍には知られていなかった)には劣るものの、それ以外の日本戦艦を上回る高速性を獲得している。

装甲は米戦艦として初めて傾斜装甲を採用するなど、標準型戦艦より進歩した構造となっているものの、あくまで対14インチ砲防御を目標としており、16インチ砲には不足とされている。
それもあって弾薬庫部分には側面に95~51mm、水平部に51mmの装甲が貼り足されている。(垂直部の方は水中弾防御が主な目的)
主砲16インチ砲は新型のスーパーヘヴィシェル(SHS)に対応。初速はやや遅いものの撃ち出す砲弾重量の大きさにより、近遠での威力を両立させた砲弾である。
戦時中も砲弾の改正が何度か行われており、今回は最強状態と言うことで最終時のmod6~8を使用する。
貫通力を見てみると垂直の貫通力は旧式の16インチ砲と大差なく、各国の新型15インチ砲に劣るという意外な結果に。
一方で水平装甲に対する貫通力では初速が遅く、射程が短い分落角が大きくなる特性から、20km台後半では46cm砲を上回り新戦艦中最強となっている。

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大和型戦艦

一番艦大和 1937年起工 1941年竣工 
全長263m 全幅38.9m
基準排水量 6万4千トン
15万馬力 27ノット

搭載主砲 45口径94式46cm砲 砲弾重量1460kg 初速780m/s 最大射程42km
貫通力 
18.3km 垂直561mm 水平104mm
27.5km 垂直430mm 水平150mm

装甲厚
垂直装甲 410mmVH+16mmDS傾斜20度 → 14mmDS
砲塔前盾 650mmVH 傾斜45度内傾
バーベット 560mmVH
水平装甲 16mmDS+18mmDS → 20mmDS → 200mmMNC +10mmDS → 9mmDS ≒ 221/219mmMNC
砲塔天蓋 270mmMNC水平~傾斜5度

上部装甲帯→甲板 なし
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 長船首楼型(リットリオ級よりも船首楼が伸びており、ほぼ平甲板と言ってしまってもいいが、本ページの甲板名称は長船首楼型に準じたものとする)

コメント
「ライトヘビー級の戦艦を」という規定を各国がごまかしながら作ってる中で、スーパーヘビー級が乗り込んできたということで。
(ボクシングではヘビー級の下はクルーザー級らしいが、今は戦艦の話をしてるのでクルーザーは・・・)

大和型についてはあまりにも象徴的な存在であるため、いろんな意味で単なる「戦艦」もしくは「兵器」という枠組み以外の視点から語られる事が多い印象を受ける。
もちろん戦艦としての評価にも様々な意見が存在するが、個人的にはサイズ以外は割と平凡な艦とも言ってしまって良いと思う。
ただ世界最大の艦載砲とそれに対応した防御を持つ世界最大の戦艦という、実際に建造された中では比較対象が存在しないレベルの艦である事は忘れてはいけない。
ネタバレにもならないが、やはり火力や装甲と言ったスペックで比較すると大和型が最強扱いになるのは仕方ない。

書くことないから副砲の話でもしてみよう。
大和の副砲は砲室が25mm(NVNC鋼を使用
の厚さしかなく、バーベット部も合計76mmと戦艦の主砲に耐えられる装甲は持っていない。
そのため副砲へ砲弾や爆弾が命中した場合には、砲塔内で装薬等が誘爆し、火災で副砲弾薬庫が危険にさらされるのではないかという説が有名である。
ネット上には「副砲に命中した砲弾が副砲弾薬庫に直撃、誘爆で轟沈する」というケネディ暗殺時みたいな不思議な弾道を描いている表現もあるが、言葉のあやみたいなものか。
(副砲塔に命中した砲弾が艦奥深くにある副砲弾薬庫に達するには落角が80度くらい必要であり、そんな落角で戦艦砲弾が降ってきたのなら、副砲に命中しなくても普通に大和の水平装甲を貫通できる)
実際のところ砲塔内での誘爆はユトランド沖海戦の戦訓により弾薬の管理などで対策がとられ、火災が発生しても防火シャッターなどの設備がある、身も蓋もないが最後は弾薬庫に注水すればいい。
大和の副砲と同じく、砲塔装甲がほとんど無い日本の重巡がその部位への直撃で致命的な損傷を負った例がないことからも、副砲弱点説はほぼ否定できるだろう。

一方バーベット基部に命中した砲弾が揚弾筒から弾薬庫内に侵入し、内部に被害を及ぼす可能性はないわけではない。煙路にすら装甲を施した大和にとっては重大な弱点かもしれない。
ただし、かなり小さい穴なのでここから敵弾が通り抜ける場合は本当に運がない場合としか言いようがない。
正直それを例に出してしまうと、艦橋への命中弾とか舵や推進軸への直撃弾と言う物についても論じる必要が出てきて、キリがないと思う。
さらに極論を言ってしまうと、副砲へのラッキーヒットをありにしてしまうと、ほとんどの戦艦は水中弾の弾薬庫ラッキーヒットで致命的な損傷を負うことになり、安全距離なんて意味のないものになってしまう。

というわけで、かなり大雑把な部位分けをしている&水中弾を無視しているこのページでは、もちろん副砲なんて部位はない。
後よく見たら揚弾筒の基部にはコーミングアーマーがあり、直接飛び込む可能性もかなり低かったのではと今は思う。

ただし艦橋の前という対空戦闘に有効な場所に副砲を置いた事は議論の対象になるかもしれない。ここに高角砲を置けば、射界に悩まされなかっただろうに。
悩ましい点として155mm副砲は比較的対空砲としても使えない事もない程度の性能があり、何よりかっこいいのだ。
ウォーターラインの大和で副砲の代わりに色々載せてみたが、やっぱり46cm砲の後ろには三連装砲塔が似合っている。感想には個人差(以下略)

主砲の貫通力に関しては、どうやら撃角が浅い状態での性能がやや低めに設定されているらしく、30km台の垂直貫通力や20km後半の水平貫通力ではそこまで突出したものとは言えない。
それでも現実的な交戦距離での垂直貫通力は最も優れ、水平装甲へも距離によっては米16インチ45口径を上回るなど、世界最大の艦砲にふさわしい性能を示している。

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アイオワ級戦艦(1945年時)

一番艦アイオワ 1940年起工 1943年竣工 
全長270m 全幅33m
基準排水量4万8千トン
21万馬力 33ノット

搭載主砲 50口径16インチマーク7 砲弾重量1225kg 初速762m/s  最大射程38.7km
貫通力 
18.3km 垂直541mm 水平99mm
27.5km 垂直427mm 水平145mm

装甲厚
垂直装甲(弾薬庫) 38mmSTS → 307mm classA+22mmSTS傾斜19度 → 16mmSTS →38mmSTS
垂直装甲(機関部) 38mmSTS → 307mm classA+22mmSTS傾斜19度 → 16mmSTS
砲塔前盾 434mm classB+64mmSTS 傾斜37度内傾
バーベット 439mm classA
水平装甲(弾薬庫) 38mmSTS → 121mm classB+32mmSTS → 25mmSTS ≒ 167/159mm classB
水平装甲(機関部) 38mmSTS → 121mm classB+32mmSTS → 16mmSTS→ 16mmSTS  ≒ 167/159mm classB
砲塔天蓋 184mm classB

上部装甲帯→甲板 なし
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 平甲板型

コメント
アメリカ戦艦2クラス目は、大和のライバルとして取り上げられることの多いアイオワ級戦艦。

実際はこの間にサウスダコタ級が入るが、スペックだけ見るとアイオワとノースカロライナの中に隠れてしまうので残念ながら省略。

本級はエスカレーター条項の発動を受けて、引き上げられた制限ギリギリ(竣工時はやや超過したが、すでに開戦で条約自体が無効化していた)の規模の艦として設計された。
戦後も活躍したアメリカ最大の戦艦であり、よく大和型の対抗馬として引き合いに出されることが多い。その為評価も人によって差が激しい艦だろう。
個人的には、最大速力33ノット(戦時積載では31ノット程度だったらしいが)に50口径16インチ9門、さらに16インチ対応防御というのは普通に変態性能だと思う。

装甲はサウスダコタ級とほぼ変わらず、ノースカロライナ級と比べ垂直装甲の傾斜を増して対弾性能を上げているほか、水平装甲の厚さも増している。
主砲16インチ砲も同じくSHSを使用するものだが、新たに50口径砲を採用して初速も上がり、1945年より搭載されたmod6~8を使用すれば 、垂直装甲への貫通力は大和型にすら匹敵する。
その代償に水平装甲への貫通力は低下したが、45口径砲は砲弾重量の割に垂直装甲の貫通力が高くない事や、遠距離砲撃の精度も初速が低い分悪かった事を考えれば、より現実的な交戦距離での攻撃力と精度を増したことは結果的に正解だったと言えるだろう。

今回は対大和はもちろん、自艦の装甲がこの主砲に耐えられるかどうかも注目だ。

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ヴァンガード

一番艦ヴァンガード 1941年起工 1946年竣工 
全長248m 全幅32.9m
基準排水量4万4500トン
13万馬力 30ノット

搭載主砲 BL42口径15インチマーク1 砲弾重量879kg 初速 749m/s 最大射程30km
貫通力 
18.3km 垂直452mm 水平86mm
27.5km 垂直345mm 水平147mm

装甲厚
垂直装甲(弾薬庫) 349mmCA+22mmDS傾斜約4度 → 38mmDS
垂直装甲(機関部) 324mmCA+22mmDS → 22mmDS
砲塔前盾 324mmCA傾斜30度内傾
バーベット 324mmCA
水平装甲(弾薬庫) 22mmDS+19mmDS →149mmNCA +13mmDS ≒ 169mmNCA  33.5 156.5
水平装甲(機関部) 22mmDS+19mmDS →124mmNCA 13mmDS ≒ 145mmNCA  131.5
砲塔天蓋 149mmNCA 水平~傾斜5度/横傾斜数度

上部装甲帯→甲板 なし
上部装甲帯→傾斜部 なし

船体 平甲板型

コメント
戦艦の歴史を締めくくったリサイクル艦、それがイギリスのヴァンガードである。
(何を持って最後の戦艦とするかは、世界初の空母と同じように条件によって変わり、本級よりも後に完工したジャン・バールや、後の時代まで現役だったアイオワ級も候補である)

第二次大戦前のイギリスは、先述したKGV級とエスカレーター条項に対応したライオン級(16インチ9門、4万トン)からなる戦艦部隊の整備を進めていた。
しかし日独海軍を同時に相手にした場合、現状の戦力では不足する恐れがあり、さらなる新型戦艦の建造では砲塔の製造能力がネックであった。
そこで妥協案として、ワシントン条約に空母に改装されたカレイジャス級巡洋戦艦が搭載していた15インチ主砲を再利用し、新たに建造されたのが本艦である。
なお開戦により建造は遅れるも、ライオン級の様に建造中止されることなく、日独海軍が消滅した戦後に竣工。

就役後は以前のフッドのように英国海軍の象徴となった他、王室ヨット御召艦としても活躍した。

まず防御面を見ていくと、基本的にはKGVと同じだが、装甲帯がやや薄い他、砲塔の形状が違う為、装甲の傾斜角も異なるものとなっている。
カレイジャス級の物を流用した15インチ砲は改装により射程を増したほか、誘爆対策や新型砲弾への更新が行われた。
貫通力を見ると、垂直装甲へは他国の新型15インチ砲や16インチ砲にやや劣るものの、水平装甲への貫通力では負けていない。
またこの砲は強装弾の運用もなされており、その場合垂直装甲の貫通力はネルソン級の16インチ砲を上回る。
今回も最強状態として採用しようと考えていたが、どうやら強装弾は沿岸砲台のみの使用で、艦載砲では使用されていなかったらしいので見送ることに。

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